血精液症
精液に血液の混入があると、精液が赤くなります。この状態を「血精液症」と呼びます。精液は精巣から精巣上体(せいそうじょうたい)・精管を経て移動してきた精子と精嚢(せいのう)および前立腺の分泌液が混じていますが、精液液状成分の大部分は、精のうおよび前立腺の分泌物が占めていますので、出血部位は多くの場合は精のうまたは前立腺です。一般的に、射精時に痛みを伴うことは少ないですが、逆に痛みがあるときは炎症が疑われます。
血精液症の原因
精のうまたは前立腺の炎症や、うっ血などの局所の循環障害が比較的多いですが、他の原因として考えられるのは、精子輸送路(精巣・精巣上体・精管・精のう・前立腺)の腫瘍、のう胞、結石などが挙げられます。また、血液凝固異常(血が止まりにくい)や血管が脆弱(もろいこと)のため出血しやすい状態の場合、射精時のいきみで精のうの微小血管から出血することがあります。しかし、多くの場合では検査をしても異常が確認できないため、特発性血精液症と診断されます。
血精液症の診断と治療
泌尿器科診察では、精巣・精巣上体などの外陰部診察を行い、次に直腸診で前立腺・精のうに異常があるか調べます。超音波検査は更に精度の高い検査ですので、診察の後に行う場合が少なくありません。検尿で血尿を伴う場合は膀胱や腎臓に異常がないかも超音波検査で調べます。超音波検査で異常を認めたり、腫瘍の存在を否定する必要がある場合はCT、MRIなどを追加することもあります。また、中高年以上の方は前立腺癌の有無を調べるためPSAという腫瘍マーカーの採血を行います。ただし、血精液症の方で癌が見つかる確率は高くありませんので、余り心配する必要はありません。検尿や診察で精子輸送路(精巣・精巣上体・精管・精のう・前立腺)の炎症があると診断した場合は、抗生物質や抗炎症薬で治療します。
以上の検査で特に問題ない場合、無治療で経過観察していただきます。多くの場合は、精のうに貯留した古い血液が、その後何度か排出されるため、完全に血精液が消失するのに、1-2ヶ月要する場合も少なくありません。
患者さんへのアドバイス
多くの場合、検査をしても原因が特定できない特発性血精液症と診断されますが、症状が続く場合や、悪性腫瘍の発生が多くなる高齢者は、専門医を受診してください。
若い方の場合、血精液症で性交を行っても女性パートナーへ悪影響を及ぼすことはありませんが、炎症が原因の場合は感染する場合もありますので、少し性交を控えた方が良いでしょう。